好きなことがあるが、それをやりたいことにつなげられない。
そのため、社会に働きかける方法が見つからず、立ち止まってしまう。
そんな場合におすすめしたいのが「在野研究」です。
初心者でも、専門家でなくても、在野研究は誰にでも挑戦できる魅力的な方法です。
在野研究とは、大学や研究機関に所属せず、個人で行う自由な研究活動のことです。
好きなことや興味のあるテーマを深く掘り下げ、自分なりの視点で発見や考察を行うことができます。
そして、成果を共有することで、新たなチャンスややりがいを見つけるきっかけにもなります。
当記事では、在野研究の基本的な概念と魅力、在野研究の実践方法を簡潔に解説します。
在野研究という選択肢を知ることで、停滞していた一歩を踏み出すきっかけがきっと見つかるはずです。
在野研究
在野研究とは?
在野研究とは、大学や研究機関に所属せず、個人で自主的に行う研究活動のことです。
自分の興味や関心に基づいてテーマを選び、調査や分析を進めます。
専門家の一つの活動方法としても用いられる一方で、一般の人が「好きなこと」や「興味」を具体的な形にしていく手段としても有効です。
在野研究の魅力と可能性
在野研究は、特別な実績や資格がなくても、誰でも今日から始めることができます。
在野研究の魅力は、自由度の高さです。
自分のペースで研究を進めることができ、他人の指示や制約に縛られることがありません。
また、自分が好きといえる、興味を持っているテーマに没頭できるため、モチベーションも高まりやすいです。
そのため、結果を気にすることなく、学びながら経験を積み上げ、独自の視点で考察していく過程を楽しむことができます。
さらに、研究成果を共有することで、世の中とつながる可能性も広がります。
興味を持っていることや好きなことが形にならずに、モヤモヤとしている人にとって、在野研究は自分のやりたいことを見つけるきっかけとなるでしょう。
始め方
テーマ・研究対象を見つける
在野研究を始めるには、まず自分が興味を持っていることや好きなことをテーマや研究対象として選びます。
歴史、科学、アート、文化など、どんな分野でも構いません。
重要なのは、自分が深く探求したいと思える対象を見つけることです。
実例
私は武術が好きですが、あくまで趣味として続けていました。
プロの格闘家や道場経営などを目指す道もありましたが、「もの作り」のようなクリエイティブな活動への憧れがあり、それを形にする方法を模索していました。
そんな中、ふとしたきっかけで「武術をテーマに在野研究として取り組む」という選択肢に気づきました。
他人からすれば些細なことかもしれませんが、私にとっては疑いなく「これだ」と思える瞬間でした。
やりたいことを少しでも形にできる可能性と、自分の内面が満たされた感覚を得ています。
この気づきによって、心のモヤモヤが消え、晴れやかな気持ちになりました。
在野研究の活動
在野研究では、独自の方法を確立することが重要になってきます。
資金調達、情報収集の方法、データの分析手法、レポートと論文の作成、成果の発表方法など、自分(研究内容)に合った方法を見つけていきましょう。
これらは、社会・文献調査、フィールドワーク(実践)、他者との交流などから見出していきます。
資料や文献を調べる、現地を訪れる、実験する、記録をとるなどで、小さな一歩から始めてみるとよいでしょう。
在野研究の実践方法
在野研究では、独自の方法を確立することが重要になってきます。
資金調達、情報収集の方法、データの分析手法、レポートと論文の作成、成果の発表方法などで、自分(テーマ・研究対象)に合った方法を見つけていく必要があります。
これらの手段を活用しながら、自分に合ったスタイルを少しずつ構築していくことで、研究をより深めていくことができるでしょう。
1、資金調達
在野研究では、大学や研究機関に所属していないため、研究資金の調達は個人で行います。
資金源としては、クラウドファンディングや民間の研究助成、そして個人の貯蓄などが考えられます。
中でも、個人の貯蓄は最も現実的な選択肢です。
2、情報収集
在野研究を成功させるためには、効率的な情報収集が不可欠です。
インターネット、図書館、専門書、論文などの文献調査、フィールドワークなどの実践と、あらゆるリソースを活用して情報を集めましょう。
また、学会などでの専門家や他の研究者との交流も有益です。
3、データ分析からレポート・論文作成
- データ分析と考察:集めた情報やデータをもとに、独自の視点から分析・考察を行います。
データの整理、統計分析、比較検討など、具体的な手法を用いて深く掘り下げていきます。
ここでの考察が、研究の独自性を際立たせる重要なポイントとなります。 - 内容整理:データ分析と考察の結果を基に、論文やレポートの構成を計画し、執筆に取り掛かります。
この際、論文やレポートの基本的な構成に則り、序論、文献レビュー、方法、結果、考察、結論の各セクションに必要な内容を整理します - 作成:研究を学術的な評価のために、研究データの解釈や結果の要点を分かりやすくまとめ、読者が直感的に理解できる形で記述していきます。
4、レポートと論文
自分の思ったことを書いて相手の感情に訴える方法は感想文です。
また、客観性もあるがあくまで個人のものであるジャーナルもあります。
この2つと違い、レポートと論文は根拠のある主張を論理的に展開し、誰が読んでも 誤解のない表現を心がけ、読む人の理性に訴えるように書きます。
そのためレポートと論文の区別は相対的であるともいえます。
レポート
レポートは、研究やプロジェクトで得られたデータや情報を整理し、それを分析・評価するための文書です。
そのため、研究での進捗状況や中間結果を整理し、まとめるための重要な手段でもあり、与えられた課題の解答という側面もあります。
レポートを作成することで、研究の方向性や問題点を再確認し、次のステップに向けた計画を立てることができます。また、レポートを他の人に見せることで、フィードバックを得ることも可能です。
何かしらの研究のレポートは通常、以下の要素を含みます。
ネットの経過報告の動画もこれに近いものといえます。
1.背景:研究の背景や目的を説明します。
2.方法:使用した方法や手法を詳細に記載します。
3.結果:現在までの結果や発見を示します。
4.考察:結果に対する考察や次のステップについて述べます
論文
論文は、研究者が設定したテーマに基づいて研究の最終成果を体系的にまとめた文書です。
論文を執筆することで、研究の結果を広く公表し、学術的な評価を受けることができます。
論文執筆には、構成や引用のルールに従う必要があり、これにより研究が再現可能になり、信頼性や客観性が向上します。
論文は通常、以下のような要素を含みます。
1.タイトルページ:タイトル、著者名、所属機関、必要に応じた連絡先。
2.アブストラクト(要約): 研究の目的、手法、主要な結果、結論を簡潔にまとめた概要。
3.キーワード:研究内容を表すキーワード。
4.序論: 研究の背景、目的、問題提起。
5.文献レビュー: 関連する先行研究のレビュー。
6.方法:実験や研究の方法、デザイン、データ収集方法、分析手法。
7.結果: 研究の結果、データの提示。
8.考察:結果の解釈、研究の意義、問題点、将来の研究課題。
9.結論:研究のまとめ、主要な発見、結論、実践的な意義。
10.参考文献:引用した文献や資料の一覧。
11.付録(オプショナル):動画や画像などの視覚的表現による補足資料、詳細なデータ、アンケートの質問票など。
これらは標準的な論文構成です。
在野研究者が論文を書く場合、どの論文書式に従うべきかは、研究分野や論文の目的、成果を発表する場によって異なります。
そのため、執筆時にはAPAやMLAなどのスタイルガイド(文献引用や論文構成の規定を示したもの)を参考にすることを推奨します。
また、同じ分野の在野研究者や、発表先のフォーマットなど、多様な情報源を活用することも必要です。
最終的には、発表先や読者層の期待に合わせて書式を選び、書式の不備を防ぐよう適切に調整することが求められます。
あと、協力者への感謝などの『謝辞』は、通常、独立したセクションとして設けられるのが一般的です。
5、成果の発表と共有
在野研究では、正式な所属機関がないため、一定の制約があります。
それでも、研究成果を論文やレポートとして発表・共有することは重要です。
ブログやSNSを活用した情報発信や、学会・発表会への参加を通じて、多くの人々と知識や意見を共有できます。
近年では、オープンアクセスの学術雑誌やオンライン研究プラットフォームの普及により、在野研究者が成果を広く発信する機会が増えています。
これにより、新たな視点やフィードバックを得て、研究をさらに深めるきっかけをつかむことができるでしょう。
社会影響
在野研究と社会
在野研究では、正式な所属機関がないため、一定の制約があります。
それでも、研究成果を発表し、共有することで社会に影響を与える事例は数多くあります。
身近な研究者
アマチュア研究者による新種植物の発見、アマチュア天文家による天体の発見、アマチュア昆虫学者による昆虫の新種や行動の新発見など、在野研究者が重要な役割を果たした事例が多く見られます。
また、ラスコー洞窟の壁画に関する新発見にも、在野研究者が寄与したと考えられる事例があります。
歴史上の在野研究者
歴史上の在野研究者として有名なのは、ジェームズ・プレスコット・ジュールです。
彼はジュールの法則を発見し、熱の仕事当量の値を明らかにしました。
所属機関(大学や研究機関)に所属せず、独自の視点と実験を通じて科学に大きな貢献を果たした典型的な在野研究者です。
また、南方熊楠は生物学(特に粘菌研究、新種発見)や民俗学など、多岐にわたる分野で大きな成果を上げました。
彼も所属機関に属することなく、日本各地の民俗、伝説、宗教を調査・記録し、それらの重要性を後世に伝えました。
彼も在野研究者としての可能性を示した存在です。
他にも、メンデル、ダーウィン、ハーシェルのような研究者もいます。
完全に「在野」というわけではありませんが、彼らの研究方法や過程には在野研究の精神が見られます。
例えば、ダーウィンはビーグル号での航海を通じて進化論を提唱し、ハーシェルは独学で天文学を学び、天王星を発見するなど、専門機関に依存せず大きな成果を上げました。
また、メンデルは修道院に所属しながら遺伝の法則を発見しました。(その重要性は彼の死後になって広く認識されました)
起業と技術開発
起業に必要な技術開発も「在野」に通じる要素があります。
起業家の中には、所属機関に属さず、独自のアイデアや技術を開発して新しいビジネスを立ち上げる人もいます。
例えば、スタートアップ企業の多くは新しい技術やサービスを開発し、市場に革新をもたらしています。
ガレージから始まる起業は、その象徴的な事例といえるでしょう。
まとめ
当記事では、在野研究を始める初心者向けのガイドとして、その魅力や可能性をまとめました。
在野研究は、好きなことを追求し、独自の視点で研究を進める中で、新たな知見を得られる方法です。
さらに、研究成果を発表し共有することで、社会に働きかけるチャンスも生まれます。
在野研究は、自由な発想とスタイルを楽しみながら、自分自身の道を深めることができる有用な選択肢です。
ぜひ、興味を持ったことや好きなことに挑戦し、自分だけの研究を始めてみてください。
参考
ワードバイス:引用文献スタイルの違い(APA、MLA、バンクーバー、シカゴ)
中学生のための「探求学習」入門 テーマ探しから評価まで 著者:田中亨著
在野研究ビギナーズ 勝手に始める研究生活 著者:荒木優太
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