点字は、視覚障害者が情報にアクセスし、コミュニケーションを取るために不可欠なツールです。
しかし、その仕組みや多様な表現力についてどれだけ知っているでしょうか?
多くの人にとって点字は未知の領域であり、その重要性が見過ごされがちです。
当記事では、点字の基本構造や仕組み、表現の幅広さについてわかりやすく解説します。
点字は、視覚障害者が情報を得るための手段として長い歴史を持ち、今日も進化し続けています。
その発明者であるルイ・ブライユは、自身の経験をもとに視覚障害者が効率的に読み書きできる方法を模索し、点字を開発しました。
点字はアルファベットや数字だけでなく、音楽記号や科学記号までも表現できるようになり、その表現力の幅広さは驚くべきものです。
この背景を学ぶことは、視覚障害者に対する理解を深める第一歩となります。
また、音声認識や画像認識からの自動点字変換、AIなどの新しい技術によって、点字の可能性は大きく広がり、視覚障害者の生活の質を高めます。
これにより、点字の利用範囲は拡大し、視覚障害者の情報アクセスやコミュニケーションの手段が多様化しつつあります。
点字について深く知ることで、視覚障害者への理解が深まり、支援や共生の視点が広がるでしょう。
当記事を通じて、点字の持つ魅力とその可能性を再発見してください。
- 点字の基本構造と仕組み。
- 点字がどのような文字や記号を表現できるか。
- 教育、日常生活、技術における点字はどのようなものか。
点字の基本
点字の基本的な歴史と日本語点字についてと、基本構造と学習方法、表現力、そして点訳について解説します。
点字の歴史
点字は1820年代にフランスのルイ・ブライユによって考案されました。
彼自身も視覚障害者であり、視覚に障害がある人々が効率的に読み書きできる方法を求めて点字を開発しました。
以来点字は世界中で広く使用されています。
日本では、東京盲学校の教諭である石川倉次(1859〜1944)が中心となり、ルイ・ブライユの点字をもとに、日本語点字の確立に重要な役割を果たしました。
日本語点字と世界の点字
世界の点字システムと日本語点字には基本的な構造で共通する部分もありますが、詳細な表現方法や規則は各国により異なります。
国際的に統一された規格はないため、言語や地域に応じた学習や対応が必要になっています。
点字の基本構造と学習
- 点字は、2列3行の6つの点を組み合わせて構成されています。
各点には番号が付けられており、1から6までの組み合わせで文字や記号が表現されます。
これを1マスといいます。
この6点構造は多くの言語で共通して使用される標準的な点字体系です。
また、8点もあり 、漢字など、より多くの情報を表現するために使われます。
- 6点点字の配置:各点の組み合わせでさまざまな文字や記号を表現します。
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36 - 8点点字の配置:また、より多くの情報を表現するために、2列4行の8点構造による点字も存在します。
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- 6点点字の配置:各点の組み合わせでさまざまな文字や記号を表現します。
- 点字の学習の例として、まず6点の基本点字を覚え、簡単な文章を読む練習をします。
次に板状の点字器や点字ディスプレイを使って書く練習を行い、実践的な文章の読み書きを繰り返します。
最終的には点字略語や記号を学び、効率的な点字の使用を身に付けます。 - 点字の読み方は、指先の感覚を使います。
左人差し指を点字の上に軽く置き、左右に動かしながら点の配置を感じ取ります。
基本的に左人差し指を使って読みますが、個人によっては違いがあり、他の指も使います。
点字の表現力
- 日本語の点字の場合は、世界共通の6点の組み合わせで、仮名やアルファベット、数字、音楽記号、科学記号、句読点などの表現が可能です。
- 漢字は、音訳と仮名点字や 漢字を仮名に置き換えたり、音声で情報を伝えたりすることで対応していて、音声読み上げアプリなどがあります。
また非公認の、6点漢字や8点漢字があり、情報を伝える方法が工夫されています。 - これらにより、文章の構造や内容を正確に伝えます。
さらに詳しく知りたい場合は、こちらを参照してください。
読む場合は、左から右に読みます。
読むことになるので黒点は凸面になります。
例
A:
○ ●
○ ○・・・・・
○ ○
読む→
2:
○ ● ● ○
○ ● ● ○・・・・・
● ● ○ ○
読む→
柱:
● ○ ○ ●
● ○ ● ●・・・・・
● ○ ● ○
○ ● ● ●
読む→
点訳とは
- 点訳は、普通の文字(点字界では、墨字という名称です)の文章を点字に変換する作業を指します。
歴史的には、点字を熟知した点訳者が印刷物を読みながら、手動で点字器などで書いていました。 - しかし、21世紀に入ると、パソコンを使用した点訳が主流となり、効率的で正確な点訳が可能になっています。
これにより、視覚障害者がより多くの情報にアクセスできるようになりました。 - 書くときは、右から左になります。
点の位置も、読むとは反対になります。
黒点は凹面になります。
例
A:
● ○
・・・・・○ ○
○ ○
←書く
点字と社会
視覚障害者は視覚に頼らずに外界を捉えるため、健常者とは異なる感覚と認識を持っています。
彼らは暗闇を恐れることなく、立体的に物を捉え、優れた触覚や聴覚を持つことが多いです。
しかし、社会は視覚中心で構築されており、視覚障害者にとっては不便です。
そこで、点字は重要なコミュニケーション手段として役立っています。
では、今後、点字はどのように進化し、社会に普及していくのでしょうか。
この普及が進むことで、点字の表現力も向上していくことが期待できます。
下記に、点字とその社会の関係について解説します。
- まず、点字プリンターや点字ディスプレイなどのデバイスの改良により、点字の利用がより手軽で効率的になるでしょう。
また、AIや機械学習の技術や、音声認識や画像認識、点字の変換技術によって、様々なシステムが開発されています。
これらのシステムは、視覚障害者が日常生活で直面する課題を解決し、情報アクセスやコミュニケーションの手段を提供することで、より独立した生活を支援します。 - 次に、点字教育の普及が重要です。学校やコミュニティでの点字教育プログラムを強化し、より多くの人々が点字を学べるようにすることが必要です。
また、点字を学ぶためのオンラインリソースやアプリの開発も進んでいます。 - 日常生活の中で公共施設や製品への点字の導入が進むことで、点字の普及は加速するでしょう。
しかし現状では、エレベーターのボタンやビール缶、電車のドアなどに点字が使用されている程度で、まだ広く浸透しているとは言えません。
多くの場合、点字は探さないと見つからないため、普及には至っていないのが現実です。
そのため、日常生活のさまざまな場面で点字がもっと活用されることが求められています。
点字入りのデザインを工夫し、実用的かつ魅力的な形で普及させるための試みが必要でしょう。
このように、点字の進化と普及は、視覚障害者がより多くの情報にアクセスできるようにするだけでなく、社会全体の理解と包容力を高めることにつながります。
点字が広がることで、視覚障害者も健常者も共に暮らしやすい社会が築かれるでしょう。
点字に関わる職種
点字の普及と支援に関わる職種は多岐にわたります。
以下にいくつかの代表的な職種です。
点字翻訳者、点字校正者、点字講師、視覚障害者の支援員、点字製品の開発者、図書館員(点字図書館)、出版社員(点字出版所)、点字ブロック設置関連
Q&A
Q:点字と自然言語の違いは?
A:下記が点字と自然言語(記述)の比較表になります。
この比較表を参考にすることで、点字と自然言語の特徴や使用法の違いについて理解を深めることができます。
比較項目 | 点字 | 自然言語(記述) |
基本構造 | 6点の組み合わせで文字や記号を表現。 多くの言語で共通して使用される標準的な点字体系です。下記参照 一方、8点もあり 、漢字など、より多くの情報を表現するために使われます。 | アルファベットや漢字、ひらがな、カタカナなどの文字や記号。 |
表現方法 | 点のパターンを指で触れて読む。 | 紙や画面に書かれた文字を目で見る |
読み方 | 左から右へ。 指先の感覚で点字を感じ取りながら読み進める。 | 目で文字を追いながら読む |
書き方 | 右から左へ。 板状の点字器や点字タイプライターで点を打つ。 点字プリンターに出力する。 | ペンで文字を書く。 キーボードを使って入力する。 |
使用者 | 主に視覚障害者。 | 主に視覚に問題のない人。 |
考案者兼発明者 | ルイ・ブライユ(19世紀初頭) | 不明(各言語ごとに異なる起源) |
歴史 | 19世紀にフランスで発明され、世界中に普及。 | 古代から存在し、各地域で独自に発展。 |
種類 | 日本語の点字、英語や他の言語の点字も存在します。 | 世界各地に様々な言語があります。 |
学習方法 | 点字図書館や視覚障害者支援センター、オンラインなどで学習。 | 学校教育、オンライン学習、書籍など多様な方法で学習 |
ツール | 点字ディスプレイ、点字プリンター、点字練習帳 | 書籍、紙を含むノート類、パソコン、スマートフォンなど多様なツール。 |
用途 | 視覚障害者の読み書きや情報アクセスの手段。 | 一般的なコミュニケーション、情報伝達、教育など多様な用途。 |
メリット | 視覚障害者が自力で情報を得ることができる。 | 誰でも使えるため、広範なコミュニケーションが可能。 |
デメリット | 視覚障害者以外には一般的に使用されない。 | 視覚障害者にはアクセスが難しい。 |
将来性 | 点字ディスプレイや点字プリンターなどの技術進化により利用が広がる。 | 音声認識や翻訳技術の発展により、より多言語・多形式での利用が進む。 |
まとめ
点字は視覚障害者にとって、情報へのアクセスを可能にする重要な手段です。
点字では、アルファベット、数字、音楽記号、科学記号、句読点などを、2列3行の6つの点の組み合わせで表現します。
国ごとに詳細な規則は異なるものの、基本的な構造は共通しています。
点字は教育、日常生活、デジタル技術においても応用され、点字ディスプレイや点字プリンターなどの新しいデバイスが登場し、利用できるようになっています。
点字について学ぶことは、視覚障害者への理解を深め、包容力のある社会づくりに貢献します。当記事を通じて点字を知り、点字教育や支援活動に関心を持つことで、新たな視点を獲得するきっかけとなるでしょう。点字に関する知識を広めることで、共に暮らしやすい社会を築く一歩を踏み出しましょう。